【グアテマラ滞在記④ アティトラン湖】勇気の出し方は「足し算」

勇気の出し方は難しい。怖い。どうやって出せばいいか、わからない時はたくさん。だけど、グアテマラ・アティトラン湖で出会ったある人が、その考えを変えてくれた。

グアテマラの有名な観光名所の一つに、「アティトラン湖」がある。高くそびえ立つ火山に囲まれたコバルトブルーの湖は、その美しさで世界中のトラベラーを魅了し続けている。約84,000年前の噴火によりできたカルデラ湖は深さは341メートルもあり、中央アメリカで最も深い湖だ。

湖の周りにそびえ立つ山々は、シンメトリーで本当に美しく、まるで湖を守る神々のよう。そして風向きによって色合いが変わる、美しいブルーの水面。湖の周りに形成された、極彩色の民族衣装を纏った原住民の人々が住む村々。全てが神秘的なおとぎ話のようで、私は初めて訪ねた時、一瞬でこの湖の虜になった。

そして突如、自分の携帯に保存している「死ぬまでにしたいことリスト」のある項目を思い出した。

『とんでもなく美しい場所でパラグライディングに挑戦する』。

「あぁ、ここじゃん」。そう思った10分後には、もう予約の電話を入れていた。いつも決めたら即行動。「猪突猛進」と書いて「あゆみ」と読むんじゃないかと、時々本気で思う。猪と一回、素手で勝負してみたい。

そしてパラグライディング当日の朝。グアテマラ居住歴20年のドイツ人のガイドが私を迎えてくれ、他のガイド・参加者たちと共にバスに乗り込み、飛行地点まで出発。この間、このドイツ人のガイドの彼と深く話すことができた。

彼の名前はクリスチャン。ドイツ人の父親とグアテマラ人の母親の間に生まれ、ドイツで生まれ育ったが、何度も幼少時代からグアテマラを訪ねていたとのこと。毎回来る度にグアテマラの美しさに魅了され、大学を卒業したら移住する、と大学2年生の時に決意したそうだ。そして、職もないまま、彼は卒業後すぐグアテマラに一人渡ったという。

この時のことを振り返って、彼は「世界一バカな男だと思ったが、とんでもなく幸せに包まれていた。」と語った。そして、ツテを使ってグアテマラ雑貨の輸出ビジネスを営み始めたと同時に、パラグライディングに情熱を燃やすようになったという。そして色々な人から「パラグライディングを教えてくれないか」と頼まれるようになり、思いきって10年前に起業したそうだ。

「情熱でしか走ってこなかったけど、なんとかなるもんだね」と少年のように笑う彼。私はその笑顔を見て、思わず泣きそうになった。その満面の笑顔で、彼がどれだけ幸せか、全て理解できた気がしたからだ。

そして、飛行地点に到着した。バスを降り、目の前に広がる崖を見る。高さ約1000メートル。

通常私がビビるものは世界で3つしかないが(1位:母 2位:母 3位:母)、その僅差でビビっている。そしてよりによって、この日は風の強度がいつもより弱いときた。まじかよ。崖から飛び立つ時、もし風が足らずに、帆が広がらなかったらどうなるんだ?湖へ真っ逆さまじゃないか。ミッションインポッシブルのトム・クルーズでも生還は無理だ。不安は募る。

しかしクリスチャンが分けてくれた、グアテマラの美味しいパンを食べていたら、すぐにテンション回復。

クリスチャンと私。あらやだ!!みなさん!!ワタクシ初顔出し!!もう仕方ないわね、今後ともヨロシク!!

そして、飛行準備があれよあれよという間に整った。クリスチャンと私がペアになり、「一番遠い国から来た」という勝手な理由で、一番最初に飛ぶことになってしまった。そして周りの観光客はというと、ガッツポーズで「カンフー!」やら、「ジャッキーチェン!」やら、少しベクトルがずれている応援を一生懸命私に向けてくれている。生真面目な私はいちいち訂正するので、おかげさまで全く集中できない。

2人で飛行前の確認事項を終え、いよいよ飛行の時が来た。パンで回復したテンションは、また一気に萎える。もし帆が広がらなかったらどうしよう、と「もし」に慄いている私を見て、クリスチャンは私に言った。

「大丈夫大丈夫、僕を信じて全速力で駆けて。10秒間の不安を乗り越えれば、一生もんの感動が待ってるから。」

この言葉で私の中で火が点いた。

崖の一点を見つめ、無心で駆け出し始めた。クリスチャンとの息はぴったりだ。しかし、崖の淵が見えてくるが、パラグライダーに風が入る気配がない。それでも彼を信じ、駆け続けた。そして淵の一歩手前に来た瞬間、身体が無重力になるのを感じた。

そして訳がわからないまま下を見てみると、あの美しいアティトラン湖を一望している。美しい、美しすぎる。下からだと、あんなに壮大に見えていた山々と湖が、私の手のひらサイズである。額縁をつけてこの風景を今すぐ絵画にしたい。

感動してた矢先、なぜかそこで「映画『ET』で、エリオットがETと一緒に自転車で飛ぶ瞬間って、こんな無重力感だったのかぁ」と妄想がスイッチオン。謎の納得感。

このシーン

数分後、クリスチャンに教わり、自分でパラグライディングを操作し始めた。自分で自由自在に空を飛んでいる。なんという全能感だろう。飛ぶ前の不安が嘘のようである。終始感動している間、あっという間に30分の飛行が終わり、無事に広場へ着地した。

クリスチャンと一緒に、その広場で他のインストラクターと観光客が飛行を終えるのを待った後、共に帰路についた。その途中で、グアテマラビールを共に飲むことになり、小さなレストランへ入る。パラグライディングのこと、彼のグアテマラでの生活、私の日本・アメリカでの生活のこと、話が盛り上がった。

そして私は、彼が大学卒業後、単身ドイツからグアテマラに来た時の話に触れた。

「本当に勇気あるよね。大学が終わってすぐ、ドイツからグアテマラに一人で来ちゃうなんて。並大抵の勇気じゃないよ。」

クリスチャンは笑った後、「いやいや。最初からスパッと勇気持てたら良かったけどね。そんな簡単じゃなかったよ。」

そして、彼は自分の生い立ちを話し始めた。聞き始めてすぐ、彼が見せる笑顔は、とてつもない苦労の上に立っているものなのだと、心底感じ始めた。

次回へ続く)

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コメント

  1. yun より:

    なんて美しい景色でしょう。
    最初2枚のお写真にうっとり。
    ETと私で爆笑。
    感動したのかドキドキしたのか、不思議な読後感(笑)。

    素敵な笑顔、人生を満喫されていらっしゃるのがつたわってきます。次回も楽しみにしています。

    • ブッチィあゆみ より:

      本当に、生で見たら泣きそうになりますよ(:_;)この美しさから、世界中のヨガ愛好者の聖地になってます!
      ETと私の豪華共演を楽しんでいただいたようで、なによりですw 私の夢でもありましたからねw
      人生1回きりなんでね、笑って死ねるように後悔なく生きているのみです!(‘◇’)ゞバカ正直にしか生きられません(笑)
      今後も、yunさんが笑いとともに何か学びを得られるようなブログを展開していきますので、お付き合いのほど、よろしくお願い致します~!(#^^#)

  2. polar4690bear より:

    猪突猛進と書いてあゆみ…で大爆笑でした!
    amebaの時より、写真も大きく見えてこちらの方が旅行疑似体験できてるみたいで嬉しいです。
    本当にとても美しい…。

    そして、パラグライディングしているあゆみさんの笑顔がまぶしい!

    クリスチャンさんのグアテマラ移住話…すごく気になります。
    次も楽しみに待っていまーす♡

    • ブッチィあゆみ より:

      いや、本当に「猪突猛進」に戸籍上も変更しようかなと迷い中です!(笑)
      それはよかった~!疑似体験していただけるような写真、文章作りに励んでいるので、最高の誉め言葉です!!
      本当にパラグライディングは脳みそが表裏ひっくり返ったかのような体験でしたよ~何でも殻をやぶる体験は、自己肯定感を上げてくれるなと思います!(#^^#)
      次回も楽しみにしてくださいね!今後とも長いお付き合い、よろしくお願いします~(#^^#)♡

  3. 木ノ下淳一 より:

    猪突妄進の姿にいつも感動しております。
    初顔出しの写真にはショックを受けました。
    初恋の人に似ていました。
    幼稚園の時の先生でした・・・。

    • ブッチィあゆみ より:

      あら~、なんか照れる!(笑) その名誉に恥じないよう、今後も楽しくお届けします!w(謎の決意)

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