小悪魔な女、オーロラ ~アラスカ滞在記 その2~

そして仮眠をとり、夜10時半、ツアーの集合場所へ向かった。

オーロラを追いかけて10年という、まぁーチンギスハンに良く似ている韓国人ベテランガイドと合流。そして他のツアー客も集まり、ツアー車が出発。

ツアー客もアメリカ各地から集まってきた人達ばかりで、話にも花が咲く。昨日アラスカに到着したばかりの人、5日間オーロラを見れていないままの人、状況も様々である。

そんな中、チンギスハンは謎のアプリを取り出し、変なコンパスや数字の情報を見た後、自信満々の表情で一言「今晩はイケる」と私達に告げた。惚れそうになった。

このツアーの売りは、「見どころ30か所を回ってオーロラを追っかける」というもの。30か所もあれば絶対オーロラを捕まえられるだろう、と期待も高まる。

前回のブログでオーロラは彼女にするにはエキサイティングだが結婚はお断りしたい、と書いたが、ここまで追いかけたからにはしっかり嫁になってもらわないと割に合わない、と思い始めた。どこまでも人を手玉に取る女である。

1か所目、遠くにぼやっと光が早速見えた。良い出だしだ。チンギスハンはその鋭い眼光でオーロラを見つめ、「こっちだ」と舵をきって次の場所へ向かった。その姿を横で見ていて、なぜチンギスハン率いるモンゴル軍は25年間で、ローマ帝国が400年かけて征服した以上の土地と人々を支配下に治められたのか、よくわかった気がした。

そして2か所目、オーロラが一筋はっきりと見える!!ツアー客はマイナス30度という温度も忘れ、テンションだだ上がり。チンギスハンは凄いスピードでツアー客をカメラの前へ次々と送り、写真を撮ってくれた。

写真を思う存分取り終わった後、ツアー車に戻り、3か所目へ向かう。その道中、ツアー客は皆空に釘付け。一方、私は運転手席に貼ってあった、チンギスハンと妻と孫の写真に釘付けであった。孫の顔が、祖父チンギスハンの顔をコピー&ペーストしたかのような瓜二つ具合なのである。残念ながら、孫の名前は「フビライハン」ではなかった。

そしていきなりその瞬間は訪れた。林を抜けたところで、チンギスハンが「空見て!!」と叫んだのである。

彼が指さす先を見てみると・・・

そこには、満天のオーロラが!!

ちょうど良くスペースがあったので、ツアー車を止め、皆ですごい勢いで写真を撮り始めた。

この満天のオーロラは、まるで極彩色の巨大なカーテンのようであった。そのカーテンは、そよ風になびくように舞い続けた。なびく度に色も変わる。この美しさは異常である。私達は言葉を発するのも忘れ、ただただ食い入るように見つめた。

そして20分くらいたった頃だろうか、オーロラの色が徐々に薄れ、消えた。次の場所に向かったのだろう。本当に生き物のようであった。

その一部始終を見ながら、私は思った。

「このオーロラ探しの旅は、人生の縮図みたいなものだったなぁ。」

人生において、自分が欲しいものは、期待していない時、場所でポッと現れる。この「時」「場所」のコントロールは不可能である。

大体の人間の葛藤というのは、この「時」「場所」をコントロールしたいがために生じるものであると思っている。待っている時間は非常に忍耐がいるからだ。

しかし、人生の半分は「待ち」である。なので、この過程をいかに過ごすかが重要だ。と偉そうに言っているが、私は昔は今以上に短気で、良く一人でイライラし、「きのこの山」をバカ食いしていた。

きのこの山一筋三十年。一度もたけのこの山には寝返っていない。

そんな中、ある日ふと思ったのだ。

「あぁ、待たなければいいじゃん」

グーグルマップのように、自分の目的地までのルートを常に何種類か用意しておく。第一候補の経路が渋滞や事故で詰まってしまった時は、他の候補経路にすぐ切り替え、目的地までたどり着くことだけを考える。

今回の旅もそうだった。オーロラにたどり着くまで、トントン拍子ではなかった。しかし、アラスカの見どころはオーロラだけではない。雄大な大自然の中で楽しめることは他に山ほどある。なので指をくわえてオーロラを待っているのではなく、他の美しいものを堪能する経路を選択した。そのおかげで、アラスカの美しさを違う角度で見ることができた。

人生、「遠回り」などない。最初思っていた経路から外れてしまっても、それは自分が向かっている目的地を別の方角から見ることのできる、ただの「経路変更」なのである。

自分が予想していなかった経路での発見を思う存分楽しんだらいい。それによって、自分の目的が更に輝かしく見えたり、より良い目的に出会えるかもしれない。どの道を選んでも、私達は幸せになれるのである。人生はなんて最高のギフトなのだろう。人間に生まれて良かった。

ちなみに前世占いをしたら、私の前世はピータンであった。今世人間に生まれることができたのだから、私は相当美味しいピータンだったのだろう。今夜は寝る前に自分を誉めてあげようと思う。それでは皆さまご機嫌よう。

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