未来の「光」を紡ぐ ～（遅ればせながらの）グアテマラ滞在記③～

グアテマラには「セマナサンタ」という祭典が３月下旬にある。これはキリストの復活祭で、この祭典の目玉の一つが「アルフォンブラ」だ。「アルフォンブラ」は日本語で「絨毯」を意味する。私が滞在していたアンティグアのセレモニーはその美しさから世界中で有名で、コロナ前は多くの観光客が毎年訪れていた。

しかし、今年はコロナの影響で、アンティグアを初め、残念ながら多くの街でセレモニーは中止となった。しかし、どうしてもこのアルフォンブラを生で見たい私。「どこかでやっていないはずがない」と、情報収集に熱を上げた。昔からだが、目標達成のためなら、アメーバのように粘り、ミジンコのようにちょこまか動く。

ホームステイ先のおばあちゃんに凄い勢いで詰め寄ったところ、彼女は００７並みの情報収集力で「３時間ほど離れた湖畔の村でアルフォンブラの祭典が行われる」ということを聞きつけて教えてくれた。はい、即ホテル予約。

そしてセマナサンタ祭当日を迎えた。見て頂戴よ、この美しさ！

「アルフォンブラ」は日本語で「絨毯」を意味する、と先述したが、これはただの絨毯ではない。色とりどりの木屑や花、パンなどで一から作られているのだ。非常に高い技術が必要とされそうなのだが、各一般家庭によって作られているというのだから、驚きである。

この技術は、各家庭で子供たちに継承されていく。「この誇りある伝統を紡ぐ子どもたちは、私達にとって『国の未来を創る光』だ」と自分のスペイン語の先生が語っていたことを、アルフォンブラを見て思い出した。そして、日本の未来を創る「光」たちのことをふと想った。

海外に出て約８年になるが、私は年々日本への愛が強くなっていくのを感じている。良いところを挙げたらきりがないが、ここまで人と人との思いやりでできている国は唯一無二だと断言できる。そして、海外で自分が日本人だと言うと、ほぼ全ての人が文化への憧れ・助け合いの精神への尊敬の念を示してくれる。これは普通のことではない。なので、同じ日本人が日本の将来を嘆く言葉を聞く度に、非常に心が痛む。

私は「言霊」を信じている。ポジティブな言葉を言えばポジティブな結果、ネガティブな言葉を言えばネガティブな結果を引き寄せることを、今までの人生で繰り返し経験してきたからだ。なので、私達が日本の未来を嘆く言葉を発すれば発するほど、私達が守るべき「光」の輝きも衰えさせてしまう気がして仕方がない。

では、大切な私達の「光」を育てるために、私達自身何ができるのだろう？

「どうせ一人が動いたところで日本の未来は変わらない」と諦めてしまったら、子供達に何も残すことができないと思う。官僚が悪い、政治家が悪い、あの人が悪い、と責任転嫁し続けることも何か彼らに残すことができるとは考えられない。

日本の未来を変えるために、何も大きなことを成し遂げる必要はない、と私は思う。私達ができることは、彼らの見本となる姿、【「何がないか」ではなく「何があるか」に目を向け、そこから主体的に人生を築こうとする姿】、を見せ続けていくことなのではないか？

確かに社会的・経済的に暗いニュースは多い。それが日本にはびこる大問題かのようにニュースも取り上げる。しかし、彼らの根底にあるのは、ネガティブな話題で注目を引き付け、利益を上げることだ。「ニュース＝社会の全て」と考えてはいけないと常に肝に銘じている。

多くの国を見てきて心から思うことだが、日本ほど生活基盤が安定していて、医療サービスにもアクセスがしやすく、セーフティーネットがこんなにも優れている国は稀有だ。例を挙げたらきりがない。

例えばアメリカなんか、ご存知のように国民健康保険はない。なので私は退職後、月５万円の請求をされた。あり得ない。もちろん加入しなかったので、無保険状態だ。そしてアメリカの破産理由１位が「医療費」であることからも、「安心して生きたかったら富裕層になってね」と言われているようである。アメリカは良いところもたくさんあるが、この国で歳をとっていくことは不安だ。日本に住んでいて、このような気持ちになったことがあるだろうか？

子どもたちは、私達の想像をはるかに超えて、周りの大人の一言一動を吸収している。「ないもの」にばかり目を向け、文句ばかり言っている大人を見て、子どもが明るく育つわけがない。「あるもの」に目を向け、それをどう利用し、自分の人生を豊かにしていくか。その姿勢をもつ大人が周りに増えれば増えるほど、子どもたちも自らの光を強めていけるのだと信じている。私も自分の未来の子どものために、その姿勢を忘れず今後も生き抜いていこうと思う。

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