【グアテマラ滞在記⑦ アティトラン湖】勇気の出し方は「足し算」④(最終回)

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恐怖や不安への向き合い方

グアテマラに行くという突拍子もない冒険を決意して、父親に自分の胸の内を批判を恐れずに話して、納得してもらって。この日から、自分の中に火が点いた。

とは言ったものの、正直何から準備を始めればわからなかった。周りを見ると、グレーのふわふわしたものが、自分を取り囲んでいる感じ。その場に留まるほど不安になっていくから、とにかく動いた。

どこへ行っても最低限のお金が稼げるように、ウェブサイト運営や、マーケティングの勉強を始めたり。グアテマラでもし上手くいかなくなった時のことを考えて、教員免許のコースを取り始めたり。

どんどん動いて、知識やスキルを身に着けて実践していくほど、不安は消えていった。そして反比例のように、更なる勇気が湧いていった。

この過程で思ったことがある。人間って、自分が感じている恐怖や不安の正体が何かわからない時に、恐怖や不安を感じるんだってこと。

正体が見えないお化けが怖いように、形が見えないから、論理的に捉えられなくて、怯えてしまう。だけど、実際に近くまで行って見てみたら、『あれ、お化けだと思ってたけど、ただの木でつくられた安っちいお化け型のボードじゃん(笑)』みたいな(笑)

まぁ、『恐怖や不安の正体がわからない時』を言い換えると、『恐怖や不安をコントロールできなさそうって思う時」、になるかな。大体そういう時って、自分の掲げている目標や想いが、ざっくりとしすぎてるんだ。だから毎回、『コントロール可能にするには、どうやって細かく目標を区切ればいいか』って逆算をしていくようにした。これが、前に進む原動力になったと思う。

グアテマラへとうとう旅立つ

そんな感じで日々奮闘してたら、いつの間にか大学卒業の日を迎えて、グアテマラへ旅立った。最初は、外国人向けのホステルで住み込みで働かせてもらいながら、現地での人脈を広げていった。

そしたら、英語とスペイン語が話せること、ウェブサイトの管理のスキルを買われて、グアテマラの民芸品の輸出業をしている会社で働けることになったんだ。自分の直感を信じて、準備してきたことが、こうやってグアテマラに来て実になった瞬間は、本当に嬉しかったよ。母も、ドイツに飛んだ後、初めて何かが上手くいった瞬間って、こんな気持ちだったのかな。ってジーンしたね。

そこで勢いがついて、幼い頃から魅せられてきたアティトラン湖の美しさを堪能するために、パラグライディングも趣味で始めた。趣味で始めたら、ハマりすぎて、瞬きしている瞬間に、講師の資格までいつの間にかとってた(笑)

その頃はアティトラン湖周辺であまりパラグライディングを教えられる人はいなかったから、口コミで色々な人から『教えてくれないか』って声がかかるようになってね。

その副業をし始めて、大学の教員資格を取得する過程でも感じたことだったんだけど、教えることが本当に好きなんだ、って改めて思い出したんだ。ここでも、点と点がつながって、線になった感覚だった。そして、依頼の数もどんどん増えていって、『ビジネスにできる』って確信した後、仲間と一緒に独立したんだ。

その後、現在までの10年間は本当に大変な時もあったけど、最高に幸せな時間だった。自分の能力を疑って、尻込みする時もたくさんあったよ。だけどそういう時こそ、大学時代の初心に返って、『コントロール可能にするには、どうやって細かく目標を区切ればいいか』って逆算をしていくようにした。

大きな目標や、勇気なんてなくてもいい。小さく目標を逆算して、それに基づいた小さな勇気を足し算していく。着実にこの道を行くことが、確実に自分を高い場所まで飛ばしてくれるんだと、母の人生を振り返っても、自分の人生を振り返っても、自信を持って言える。

パラグライディングをして、このアティトラン湖を眺める度に、この積み上げた自信と、母の教えを思い出すんだ。そして、未来に向かう力をもらえる。

この場所は、自分の人生絵図でもあるし、今後の人生の羅針盤なんだよ。そんな場所で、自分の情熱を注げるものを持ちながら生きていけるのは、本当にこの上ない幸せなんだ。母がくれた、最高のギフトだよ。」

幸せの『高め方』

クリスチャンがその時見せた満面の笑顔を見て、彼の父の言葉が私の脳裏を過ぎった。

『自分の幸せは、自分で創れる。そう思える人が、行動できるし、笑顔で死ねる。』

彼もそれを体現して、周りに勇気を与え続け、一生を終えるんだ。彼の母がそうだったように。そう思った瞬間、心が震えた。

自分が欲しい幸せを創るということは、簡単ではない。現状維持ではできっこない。自分の習慣や価値観を変えることが求められる。それは、何らかのリスクを受け入れることが求められる、ということも意味する。リスクは誰でも怖い。生物学的にも、人間は普段と違うことをしようとすると「もし~したらどうしよう」と防御本能を働かせ、なるべく失うものが少ないように行動を制限するようプログラミングされている。

人生で1000メートルの目標を最初から飛ぶのは、簡単ではない。そういう時こそ、逆算をして、最初の10メートルの目標から飛んでみたらいいのだ。10メートルだったら、リスクも10メートル分だ。そして、『10メートルの自信』を手に入れて、次に行きたくなったら、30メートル、50メートル、100メートル、と高度を上げていったらいい。

この過程で、1000メートル地点と、現在の高度を引き算して嘆くのではなく、0メートル地点から現在の高度までの足し算の結果を見て、自分を誉めてあげる。そして各高度でどんどん変わっていく景色を、笑顔で楽しんでいけばいい。そのうち、いつの間にか1000メートルを超して、もっと高いところまで飛んでいるかもしれない。

0メートル地点では、アティトラン湖の壮大な山々と湖に圧倒されていたが、勇気を出した1000メートルのパラグライディングではそれらが手のひらサイズに見えたように、これからの私の人生で、小さな勇気を積み重ねて迎えていった後の、高度1000メートルの景色を見るのが楽しみだ。クリスチャンと別れた後に、アティトラン湖沿いを歩きながら、一人笑顔で高揚感に浸った。そして、クリスチャンの母、そして彼がくれた『ギフト』の温かさを胸に感じ、家路についた。

(終わり)

グアテマラ記まとめ

グアテマラ
グアテマラを舞台にした、笑いと共に人生を考える記事のアーカイブページです。よろしくねん。

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