屋久島から教わった「無我の美しさ」

私には、長年の付き合いがある心優しいハゲの友人がいます。
室内でも盛大に光を反射する彼の頭は、まるでMacBookの最新ディスプレイのよう。外に出るとその輝きはさらに増し、飛行機が誘導灯と勘違いして急降下してこないかと、頭上を飛ぶたびに私はひやひやしています。

しかし、彼のハゲは自ら選んだハゲなのです。ある日、「無我になりたい」と思い立ち、衝動的にバリカンで頭を剃り、そのまま友人たちとのボウリングに突然現れました。そのピカピカの頭を見て、「どっちがボウリングの球かわからない」と慌てふためいた私達。

それ以来、彼はまるで憑き物が落ちたように軽やかに生き始めました。失敗を恐れず、人前でギターを弾いたり、一人旅に出たりと、次々に挑戦し、周囲に縛られることなく、やりたくないことは自然に断れるようになったのです。

その開放的な姿に、何度私もハゲに魅了されたことか。思わずバリカンに手が伸びそうになり、ハゲ未遂を繰り返しました。

先日、グループでテレビ電話をしている時、ふと思い出し、彼に当時の心境を聞いてみました。

「すごい変化だったよね。どんな気持ちだったの?」

「んー、『自分』という考えが幻想だと気づいたんだよね。『自分』という枠があるから周りと比較してしまう。だったら、その枠をなくせばいいと思えるようになった、って感じかなぁ。」

会話が終わった後、ふと「そういえば、彼、昔は髪がけっこうふさふさだったな。どれくらいだったっけ?」と思い出し、スマホの写真アルバムを探してみました。出てきたその写真に写っていたのは、記憶を上回るふさふさ具合。

……あれ、このふさふさ具合、どこかで見た気がする。何だったっけ……。

……。

……。

あっ!思い出した……!

屋久島だ……!

緑が力強く生い茂る、圧倒的な大自然。山頂から見渡すと、濃密な森がどこまでも続き、そのまま海へと溶け込んでいくようだったあの光景。苔むした木々の間をハイキングした時の「ふさふさ感」。

1993年、白神山地とともに日本で初めて世界遺産に登録された「屋久島」。「縄文杉」は言うまでもなく有名ですよね。そして、屋久島ならではの環境に適応して進化したヤクシカやヤクザルなど独自の動物たちも多く生息しています。約600種類ものコケが岩や樹木を覆い、森全体を緑に染め上げる神秘的な景色は、息を飲むほど美しかったです。

片道約11キロを瀕死になりながら切り抜けた後の縄文杉を前にテンションが上がる私とブチ母

島のいたるところに出没するヤクザル。車で運転していると石ころよりも先にサルを轢きそうになる。

屋久島を語る上で欠かせないのが「屋久杉」です。屋久島に生息する杉で、樹齢1,000年以上のものだけが「屋久杉」として知られています。中には3,000年を超える木もあり、その長寿には驚かされます。一般的な杉の寿命は500年ほどと言われていますが、屋久島の杉がこれほど長生きできるのはなぜでしょうか。

屋久島の杉が長寿を保つ理由は、独特な地形と気候にあります。硬い花崗岩により土壌の栄養が乏しく、杉の成長はゆっくりですが、そのおかげで年輪が詰まり、抗菌作用のある樹脂が豊富に含まれます。
さらに、根を深く下ろせないため、横に広がった根が他の木々と絡み合い、互いに支え合いながら生き続けているのです。その姿を目にした時、「まるで全ての木が無我の境地で一つに溶け合い、共に息づいているようだ」と感じたことを覚えています。

その光景を思い出した時、屋久島の木々が無我の境地で互いに絡み合い、一つの大きな存在として息づいている姿と、彼が自ら選んだハゲ頭で『無我』の生き方を見つけた姿が重なりました。

『無我』とは『我を無くす』のではなく、『我の枠を無くす』ことなのだと思います。限界や制約を受け入れつつ視点を変え、その枠を超えて新たな可能性を見出していく――それこそが無我の美しさです。
屋久杉も、根を深く下ろせない制約を受け入れ、根を横に広げて他の木々と絡み合う新しい生き方を選択したことで、ここまでの繁栄をもたらしました。この姿は、彼が自分の限界を受け入れ、新たな視点を得て大いなる自由と可能性を手に入れたことと重なります。

私たちも屋久杉のように制約や限界に直面しますが、「我の枠」があるからこそ、それらが存在します。ならば、悩むのではなく、その枠を取り払ってしまえばいい。

「〜するべき」「〜はそもそも無理だ」「〜しても何も変わらない」といった言葉が自分の中に浮かんできたときこそ、「本当にそうだろうか?」と自問し、常に新しい視点で物事を見ることが、枠を取り払うための一歩になるのではないでしょうか。

制約や限界と思われるものの裏にこそ、自由と成長のチャンスがある。そこで、私から一つ提案です。もし、自由と成長のスピードを2倍にしたい方がいたら、一度ハゲになってみてもらえませんか?そして、その後どうだったか、ぜひ私にご報告ください。今後の参考にさせていただきます。

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